2011年03月21日

PSP版burst記12

 今回はハッキング後のまりな編についてレビュー。毎度の如く余計なことに触れてしまっているので文書自体は長めですが、起こる出来事は「ホテル襲撃事件」のみになります。

 原作に於いては真弥子護衛任務中止の引き金となった事件であり、爆弾を抱えた男が自爆覚悟で突っ込んでくる中、次々と迫り来る敵を射殺しながらも逃げ出すという作中屈指のアクションシーン。そして真弥子の口からエルディアの王位継承問題が語られ…という物語終盤の導入部分でもあり、まさに「終わりの始まり」を予感させる重要シーンでもあります。これまでの展開の中でエルディアを象る設定は大きく原作との違いを見せているPSP版ですが、事件の根幹とも言えるこの背景部分はどう変更されているのでしょうか。

110321_01.jpg 

※ネタバレ注意!苦手な御方は注意してお読み下さい。

【まりな編 12月7日_ハッキング後】

・この場では不正アクセスがばれずに一旦ホテルに戻る。この翌日に真弥子護衛の不手際、不正アクセスの件も含めて査問という流れ。

 原作では査問中に勝手にハッキングしていた姿を香川に発見されてしまうわけですがPSP版はこのシーンが翌日に持ち込まれます。香川の内務監査が入るのは、まりなが真弥子を護衛しているにも関わらず次々と頻発する襲撃事件についての護衛任務の不手際を糾弾されるというのが名目。これは御堂の差し金であるというバックボーンがあるわけですが、その決定打となるのがこのホテルでの襲撃事件を受けて…ということになりますので、

【原作】ホテル襲撃→真弥子の生い立ちと素性を知る→護衛任務終了→査問→ハッキング

【PSP版】学校焼失→エルディアについて調べる→ハッキング→ホテル襲撃

 という違いが出てくるわけですね。順番が変わっているだけと言えば勿論そうなのですが、PSP版ではハッキングをしている時点のまりなはホテルでの襲撃を受けていないので、行く先々で情報を漏らしている存在への疑惑の有無という点も含めてのまりなの着眼点や情報量、疑惑のベクトルなどには結構差があり、その辺がハッキングシーンでのセリフや行動の端々に見て取れます。この違いを「シナリオライターが変わったから」っていうのは流石にぶった斬り過ぎなんでこういう見解も挟んでおきましょう(笑)

・ホテルで真弥子と会話中、窓の外から狙撃されて黒服連中に襲撃されてしまう。原作のような爆弾はなし。

・緊急事態を受けて甲野の携帯に連絡すると、何と不倫真っ最中の香川が出るというトンデモ展開に。しかし何とか用件は伝わったようで本部長がホテルに車を出してくれる。敵の襲撃を交わしつつ、非常階段からロビーに降りて迎えに来た本部長と合流。無事を確認後は内調オフィスに泊まることに。


 ホテル襲撃シーンは原作のようなプレゼント爆弾ではなく外からの狙撃に変更されてます。また、原作ではこの襲撃の直前、ホテル下のバーでまりなと源三郎が顔を合わせており、このことによって源三郎への疑念が生じるわけですが、PSP版ではこれがカットされているのが大きな変更点。勿論PSP版でもこの時点で源三郎にはそれなりに疑念を抱いているまりなですが、常にタイミング良く現れる源三郎への疑念などはあまり強調されておらず、「周囲の人間全てに内通者の疑惑が?」という逼迫した状況を作り上げる要素としては一つ大きなファクターを削ぎ落として来た印象ですね。  

 このホテル襲撃事件は真弥子の護衛任務の中で数々起こる事件の中でも特に緊迫感に満ちたシーンでもあり、上にも書いた通り御堂からの護衛任務要請の中止の決定打にもなった事件でもあります。つまりそれだけ真弥子の生命に危機が及ぶシーンであり、作中屈指のアクションシーンとして、そして物語の展開スピードが加速度的に速まり始めるという、まさに見せ場のシーンです。

 PSP版でもこの場から逃れる際、激しい銃撃に見舞われる中、本部長運転のワゴンがホテルの入り口に乗り付けるというなかなか派手なアクションシーンになるわけですが、その本部長がこの時まさか香川さんと合体中というのは予想の付かない変更点でした。本部長、二昔くらい前のアメリカ刑事コメディに出て来そうな間の悪さを披露しますが、果たしてここは笑う所なのかスルーする所なのかは微妙…うん、笑えば良いと思う、よ?

・まりなと甲野、真弥子から生い立ちと素性についての重大な話を聞かされる。

・真弥子は御堂の実の娘ではなかった。知らされたのは一年ほど前で日本に来る寸前。先代国王は治安維持警察を使って、他の継承権のある王族を次々と殺害していったが、真弥子はそこから逃れることが出来た王族の一人。真弥子の実の両親が殺された際、御堂は真弥子を自分の娘として匿いながら育てて来たと説明されている。(※御堂は先代国王の忠臣だったので、秘密警察の追求も緩かったのだろうと真弥子は語る)


 真弥子が自身の素性についてまりなに告白するシーン。これによって事件は駐日大使の娘の護衛任務からエルディアという国の王位継承問題という高次に政治的な問題へと発展し、まりなの任務が解かれる決定打にもなるわけですね。

 さて、原作では真弥子の母親は前国王の側室の一人で、真弥子を出産後に御堂がその側室と結婚したというウソ設定が用意されていました。この記憶の一部は前国王の妾腹の娘であるアクアの記憶をベースにして植え付けられたカバーストーリーでして、このことによって真弥子は御堂の義理の娘であると同時に前国王の落胤であり、エルディア王位の正当な継承資格を持つ人物ということが日本政府の知るところとなります。最終的には玉璽を持つ者がその資格を持つことにはなるわけですが、前国王の姪と、妾腹とはいえ前国王の娘とが、それぞれを擁立する者たちのドス黒い思惑を孕みながら王位を争うという構図が浮かび上がる瞬間でもあるわけです。

 これに比べPSP版では前国王の実の子供という直截な後継者という位置付けを無くし、実の両親が13あるエルディア王位継承権を持つ部族の一つということになっていますね。PSP版プリシアもこの13ある部族の一族の出という変更を受けています。かつて先々代の折の共産革命時に重臣や親族に裏切られて祖国を追われた屈辱的な過去を持つ先代エルディア国王から見れば、名乗りを挙げていなくてもこの13部族の一族は潜在的なライバルという事実に代わりは無く、襲撃を受けて排除された王族も多数いる…と真弥子が明かします。この辺が原作とは大きく違うところですね。また、後に判明しますが、アクアは先々代の子で前国王とは腹違いの妹、青海慎吾は前国王の隠し子という設定になっており、最終的に真弥子を担ぎ上げる派とプリシアを担ぎ上げる派の暗闘の中で彼女たち以外のこの二人の後継者はディーブによって殺害されてしまいます。

 原作では最終的にはプリシアか真弥子か――という展開になりますが、実はここに妾腹の子であるアクア首相の後見という前提条件ありきという側面があり、単純に王位に就いたら権力をまるまる掌中に!ということにはならなかったのがミソ。つまりプリシアとアクアはそれを見越して既に先々の政策やら権力構造やらを話し合っており、その為に協力をしていたというのが原作burstの水面下の事情になるわけですね。

 ここに真弥子が、それこそ忽然と乱入してくるという事がどれほど突飛で想定外な事態かという点を今一度掘り返してみましょう。政治的なビジョンやコンセンサスは用意されておらず、少なくともプリシアとアクアの間で合意が為されていた「民主主義体制への移行」というエルディア国家のビジョンは変更を余儀なくされていたと思われます。恐怖政治を敷いて恐れられ、また畏れられていた前国王の後継者が二十歳前の少女という点で大多数の国民はヒロインシンドロームにも似た共感を以てこの新しい、そして健気な王女を支持するでしょう。しかしその少女の中には死んだはずの前国王の人格が宿っており、その後見人として腹心である御堂が国王の傍らに居座り続ける…アクアやプリシアが考えていた民主的な近代政治への移行は相当遅れてしまったはずで、情報部残党を束ねる御堂が後見人となることで政治的暗闘がまた繰り広げられることになるという最悪な予想が立ってしまいます。

 また、御堂の計画の綿密な点は、仮にこの目論見が失敗してプリシアが即位をしたとしても後にこれを排除して替え玉とすげ替える所まで想定していたという点でもあります。

110321_02.jpg

 Cプロジェクト自体はドールマン=孔の開発に目を付けた源三郎の発案であり、国王が死んでもその記憶と精神を他者の肉体に移植して生かし続けることが出来るというもの。この「国王の死」についてですが、前国王が既に重篤の病気を患っていたり相当の高齢であったという前提ありきならばまだかわいげもあるのですが(※いや、無いか)、この時源三郎ら情報部が想定していた「国王の死」というのは改革派による暗殺などを意味しています。それは恐らく自身の身の危険に異常なまでに敏感になり始めた前国王の恐怖観念から発せられたものであったとは思いますが、大袈裟ではあっても全く根拠のない妄想とも言い切れなかった状況ではあったはず。この「改革派」には、勿論そういう暗闘を好んで用いるような性格ではなかったとは思いますが、やはりアクアやプリシアも含まれていたはずで、源三郎が最後まで「プリシアに気を許すな」と忠告していたのはこの辺の事情も背景にあったからだと思うんですよね。

 つまりC計画とは、死を恐れて「永遠の生」への妄執を抱き始めた前国王の儚くも愚かな夢…などというロマンチックなものではなく、「記憶と人格のバックアップ」を用意することで、しぶとくエルディアに君臨し続けるという非常に現実的な計画でもあったわけです…と、ここまでが源三郎の計画になりますね。この後源三郎はこの非人道的な計画に荷担したことを恐れて情報部から逃亡することになります。

 ここまででも相当恐ろしい計画なんですが、更に御堂が今回の王位継承事件で用意したプランは、この容れ物として用意したクローンの素体としてプリシアのDNAを使用したという点。つまり真弥子がダメな場合はプリシアを殺して、プリシアに成り代わるという二段階目を用意していた点ですね。個人的にはここで「御堂真弥子とは何者なのか」という点と「ロス=御堂の忠誠心」なんかを語ってみたいわけですが、それはまた色々と書くことが長くなっちゃいますので次の機会に持ち越すことにします(笑)

 兎にも角にも、ロス=御堂という男が今回の事件の中で如何なる思惑で動いていたのかというのは、burst errorという作品の魅力にまた違ったスポットを当ててくれる要素ではないかと私は常々妄想しているわけです。

 「死者を降臨させる」が如き無謀なプランの是非を御堂のような切れ者が判断出来ない筈が無いのですが、それでも尚「あの御方の意志」として事の正否を埒外に置いて任務を遂行する御堂の狂気とも言える忠誠心がそこにはあるわけで、加えてホテルのバーやトリスタン号内で少しだけ垣間見ることの出来るアクアと御堂のやり取りの中にどれほどの思惑やドラマが込められているか――というのがこの妄想の幅を広げる面白さでもあるわけですが、まあ、どうやらこの流れだとPSP版ではその辺はカットされてそうな感じですね。そもそもburst作品内に於いて最も隠れたドラマを持つあのロイド首相が、冒頭でいきなり殺害されちゃうただの夢見るコールガールに成り下がってますし…およよ。

 ま、ちょっとこの時点での考察からは大きく逸れてしまいましたが、王位継承問題というburstの隠れたテーマに関しての変更点もハンパねえ状態ですので、終盤付近で御堂、ディーブらの思惑が判明するに連れて原作との違いがより顕著になって来ます。そして原作ではあまり触れられてこなかった良さをリスペクトするという意味も込めて今回のレビューとなりました。

 どっちにしろPSP版では真弥子にしてもプリシアにしても「王の座に就く」という事に関しての決意や経緯はかなり簡略化されている印象でして、その分ストーリー的にもキャラ的にも分かりやすくなっているのかなあとは思うのですが、ネルを喪うことで即位への決意を固めたプリシアはともかく、真弥子は王位継承の決意をする際に原作にあった「復讐のため」というような言葉は今のところ出て来ません。作品としての結末は同じながら、結末に至るまでの過程とドラマはどのように変更されていくのでしょうか。ラストに向けての期待と不安は高まるばかりです!(※棒読み)

 さて、次回は【小次郎編12/8前半、ディーブに捕まってしまう所まで】をレビューする予定です。高貴な生まれの生娘が、ダイタンにもお忍びであんなコトやこんなコトまで…な内容。見逃せませんね!
posted by talk at 02:36| Comment(3) | 【PSP】burst error EVE the 1st | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ラストに向けての期待と不安は高まるばかりです!

ラストに向けての期待などなく不安すらもすでにない状態。
ですねwww
Posted by akira at 2011年03月21日 14:38
>akira様

 いや、別にそこまでというわけではないですよー。ただ、終盤の展開が原作と相当変わっているのはプレイして確認しちゃいましたので思うところは多々ありますね、やっぱり(笑)

 多少キャラの言動や雰囲気が変わっているのは許容範囲なのですが、「まさかこういうことはしないだろー?」的なことを平気でやらせてくるので本当にびっくりします。マジパねえっす!
Posted by talk(管理人) at 2011年03月21日 23:29
ディーブにさらわれた辺りはほんとびっくりでした。
っぱねぇ!って思いました。
日記更新楽しみにお待ちしております。
Posted by akira at 2011年03月22日 12:22
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]